V37スカイラインHEVに乗り換えて約2000km程乗ったのでファーストレビューをします。
今回はパワートレイン・ブレーキフィールについてです。
※個人の主観が入っているので、あくまでも参考程度に読んで下さい。
【レビューする車】
スカイラインHEV タイプSP(V37)
2014年式前期型、走行距離 約6万km
※前車はBLレガシィ 2.0GT spec.B 6MT
パワートレイン
V37スカイライン350GTは3500cc V6エンジンとモーターによるハイブリッドで、7ATと組み合わされます。
ハイブリッド車としては珍しい有段ATのトランスミッション。
出典:NISSAN
1モーター2クラッチ方式のハイブリッドで、エンジンとミッションの間にはトルクコンバーターは介さず、代わりにクラッチが入っています。軽量化やエネルギーロスの軽減、ダイレクト感やレスポンスの向上に効果があるよう。
エンジン・モーター間のクラッチを切り離すことでエンジンを停止してのEV走行が可能になります。
エンジン・モーターのスペックは下記の通り。
最高出力 (ps(kw)/rpm) |
エンジン:306(225)/6800 モーター:68(50) |
---|---|
最大トルク (kg・m(N・m)/rpm |
エンジン:35.7(350)/5000 モーター:29.6(290) |
エンジンとモーターを合わせたシステム最高出力は364PS。
エンジンとモーターの棲み分け
スカイラインHEVはハイブリッド車ですが、乗ってみて思うのはこの車の主役は明らかにエンジンの方です。
モーターはあくまでも補助に徹していて、停止時はもちろんのこと、負荷が少ない走行時にエンジンを停止させて燃費を稼ぐのと、登板や大きく加速するときのアシストとして活躍します。あまりその存在を主張してきません。
モーターは低速時から最大トルクを発生させるので、かなり力強い加速をするイメージがありました。実際、スペック上のモーターのトルクは290N・mもあります。が、スカイラインHEVのモーター走行はかなり控えめのトルク感です。
EV走行はできますが、0発進時はゆっくりと速度をのせていく感じで、もうちょっとトルクが欲しいなあとアクセルを踏み増すと即座にエンジンが始動します。
バッテリーへの充電が十分にたまっているときは、モーターのみで巡行速度まである程度の加速はでき、多少の上り勾配でもエンジンを起こすことなく頑張ってくれます。バッテリー容量が6メモリ中3以下程のときは、そろっーと走り出さない限りはモーター走行で速度をのせていくのは難しいです。
エネルギーモニターで確認する限り、一旦エンジンが始動すると基本的にモーターはアシストせずエンジン単独で駆動しているようです。高いギアに入っている状態からの加速時や上り坂、アクセルをワイドオープンした加速時などの限られたシチュエーションでは、エンジンとモーターの両方が駆動します。
基本的にはエンジンorモーターのみの走行、たまにエンジンandモーター両方という感じです。
水温が低く、且つ充電が少ないとき以外は負荷の少ない走行条件で積極的にエンジンを停止させようとします。
負荷が少ないときにアクセルをオフにすると、一呼吸おいてエンジンが停止するのですが、アクセルの踏み具合によっては、またすぐにエンジンが再始動します。そのため40~60km/hで巡行中でもエンジンは頻繁に停止・復帰を繰り返します。
アクセルワークでエンジンのON,OFFが可能である点は、ドライバーのコントロールの余地があり面白いです。
エンジン⇔モーター切り替えの制御について
モーター走行時はエンジンとミッション間のクラッチを引き離していますが、ミッションは速度に応じて変速していると思われ、モーター走行しながら1速⇒2速⇒3速⇒4速・・とシフトアップしているようです。モーター走行時にシフトをMモードに入れると、ギアポジションが表示されますが、速度によって表示が異なることからも分かります。
モーター走行で加速中に一定間隔で推進力が微妙に変わるのですが、ミッションが変速しているからとなると合点がいきます。
よって、モーター⇒エンジンへの切り替え時も、速度に応じてミッションは適切なギアに入っているので、瞬時にギアにあったエンジン回転数に上げてエンジンが始動するようになっています。モーター走行中に、30km3速のときは1500回転でエンジン復帰、40km4速のときは1500回転でエンジン復帰(数字は適当)というようなイメージ。
モーター⇒エンジンへの切り替わりの滑らかさについては、低速時や0発進からの加速時は、音の変化ももちろんですが、トルクの出方が変わるのではっきり分かります。控えめのモータートルクに対して、エンジントルクが大きいからなのか、切り替わり時にグッと引っ張られる感じがあります。
一方、40~60km/hで巡行中はタコメーターやエネルギーモニターを見ていない限りはエンジン⇔モーターの切り替わりに気付かないほどに滑らかです。
いろいろと複雑な制御ですが、アクセルの踏み加減でリニアに欲しい加速は得られます。ただ、モーター⇒エンジンへの切り替わり時に若干の不感帯があり、一瞬なのですが、アクセルに対してトルクが付いてこない部分があります。
そのときにアクセルの踏み込み量が大きいと、エンジンのトルクがついてくるようになったときにグッと引っ張られるような加速になるときがあります。
モーター⇒エンジンの切り替わり時のトルク変化を滑らかにするための制御かもしれませんが、慣れないうちはここで少しギクシャク感があります。
また、モーターからエンジンに切り替わる瞬間は「バウンッ」という結構勇ましい音がなります。演出なのか?カッコ良くて気に入っています。
燃費
以前は燃費なんて気にしないと思っていましたが、だんだんと車選びの重要な要素になりつつあります。レガシィ2.0GTのように悪いときにリッター7kmとかの数値が出てしまうと・・・
スカイラインHEVに乗り始めたばかりのとき、加速時などにすぐにエンジンが始動するのでほとんどエンジンだけで走っているように感じて、あまり燃費は伸びないんじゃないかと心配していました。
EVオドメーターでモーターのみでの走行距離が表示可能になっているのですが、とある計測時は687.1km中313.4kmをモーターのみで走行しました。比率にすると約45%で、案外モーターのみでの走行距離が多く驚きました。こんなにモーターだけで走ってたの?というくらいに。
0発進からの加速時はアクセルを少し踏んだだけでエンジンが始動するので、モーターの存在が薄く感じられていたのですが、定速巡行や下り坂、アクセルOFFにしたときなど、知らず知らずの内にモーターが距離を稼いでいたようです。条件が揃えば、100km/h巡行でもモーター走行が可能です。
このときの燃費は満タン法で11.69km/lです(レガシィで同じ使い方をしたらおそらく9km/l程かと)。
ハイブリッド車としては良いとは言えない燃費かもしれませんが、純粋な3500ccエンジンだとおそらく5~7km/lくらいの燃費になりそうなので、そう考えると十分でしょうか。贅沢言うならもう少し伸びてほしいのですが・・
VQ35HRエンジン・7AT
ハイブリッド車ですが、エンジンの存在感は大きいです。
エンジンルームにはV6 3500ccのVQ35HRが鎮座しています。HRはハイレスポンスの意味らしい。
確かにレスポンスは良く、上まで滑らか且つきれいに回るし、高回転でも苦しそうな感じはないです。直6ではないですが、これも日産が誇る名エンジンなんだなと感じます。
アクティブサウンドコントロールという機能がスピーカーから音を出しているみたいなので、どこまで本物か分かりませんが、低回転から聞こえてくるV6の音にはしびれます。
エンジンを回さなくても1000回転強~2000回転くらいの常用域で「ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル」というサウンドが聞こえてきます。
スカイラインHEVのATはトルコンを介さないことでダイレクト感に優れるようですが、私自身AT車が初めてなので違いがよく分かりません。
0発進時からエンジン走行する場合、回転の上がり方が半クラッチを使って発進するMT車みたいですし、キックダウン時も滑っている感覚はないです。冷間時は特にですが、エンジン走行している場合、1速⇒2速へのシフトショックはあるので、そういうところでダイレクトさを感じることはあります。
ブレーキフィール
前期型のハイブリッド タイプSPにはスポーツチューンドブレーキが装備され、フロントが対向4ポッドキャリパー,リアが対向2ポッドキャリパー。
憧れの対向ブレーキキャリパーは、タッチの良さやコントローラブルであることがメリットですし、やはり見た目もカッコ良いです。
スカイラインHEVはハイブリッド車なので、ブレーキパッドでローターを挟むことによる摩擦ブレーキに加え、回生ブレーキを使用します。ブレーキペダルを踏むと摩擦ブレーキと回生ブレーキの両者を上手く調整しながら減速力を発生させる回生協調ブレーキというものです。
よって、ブレーキは一般的なガソリン車のようにドライバーの踏力をエンジンの吸気負圧を利用して増大させ、油圧⇒ブレーキパッドへと伝える方式ではありません。ペダルの踏み込み量を電気信号に変えて、摩擦ブレーキ・回生ブレーキを作動させる、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤのシステムになっています。
ちなみに、スカイラインHEVはアクセル・ブレーキ・操舵の全てがバイ・ワイヤです。
そして問題なのは・・・、
回生ブレーキとの制御が上手くできていないのか、この車のブレーキフィールは癖が強いのです。具体的には下記の通り。
①制動力の出方が不自然
②リニア性に欠けるブレーキタッチ
③ブレーキング中に変わる減速G
④停止直前に発生する揺り戻し
①制動力の出方が不自然
ブレーキペダルを踏むと制動力が急に強くなるポイントがあり、カックンブレーキになることがあります。
例えば、路地から出ようとしたときに車が走ってきて「おっと危ない」と思わずブレーキを踏む足に力が入ると、歩くくらいの速度からのブレーキでも体がつんのめるくらいの急停止になってしまいます。
前車レガシィは踏んだ分だけ効くブレーキで初期制動はそこそこ弱めだったので、余計にそう感じるのかもしれません。
②リニア性に欠けるブレーキタッチ
上述の通りなので、ブレーキを掛けるときは強く効くポイントまでいかないよう、優しくなでるように踏みこんでいく感覚なのですが、ペダルタッチが曖昧なのでどれだけ踏めばどのくらいの制動力が発生するのかが読みづらいです。
赤信号で停車するときにブレーキを掛けるときは、常に一定の踏力でペダルを踏むのではなく、前車の動向に合わせて微妙に踏み加減を変化させて減速度をコントロールすると思います。この微妙に踏み増したり、抜いたりの制動力のコントロール性が悪く、「思ったよりも止まらないな」と踏みますと制動がギュッと強くなったりします。
バック駐車するときなんかが顕著で、ブレーキの踏み量でクリープの駆動力を微調整するのが難しく、車が前後にピッチングしてギクシャクした動きになります。
③ブレーキング中に変わる減速G
ブレーキを踏んで減速中にペダルの踏み込み量は一定にしていても、減速度合いが急に強くなったりすることがあります。
回生ブレーキが作動していると電車が駅で止まるときみたいに「ヒューーン、 ヒューーン、 ヒューーン」という音がほのかに聞こえます。このヒューーンとヒューーンの境でおそらくミッションがシフトダウンしているのですが、ここで減速度合いが変わります。減速G(回生ブレーキ)が急に強くなったりするので、ペダルの踏み込み量で微調整する必要が出てくるのですが、上述の通りコントロール性が悪いのでギクシャクします。
減速時に軽くブレーキを踏み続けるようなシチュエーションでも、途中から減速度が強くなったりするので、思っていたよりも2,3m手前でとまりそうになることがあります。
ブレーキを離しても回生ブレーキが強く作動していて、(エンジンブレーキ相当で考えると、4速だったのが、ブレーキを踏んだら1速、2速に落ちているようなイメージ)今度はアクセルを少し踏み足さないといけません。
「今踏んだら手前で減速しきってしまうのではないか?」などと考えて、ブレーキを踏み始めるタイミングに迷いが出ることがあります。
④停止直前に発生する揺り戻し
多くの人はブレーキを掛ける際、停止時にカックンとならぬように停止直前に一旦ブレーキを緩めるという操作を無意識のうちにしていると思います。
私もカクンとさせたくないのでそのようにしていますが、スカイラインHEVはなぜかそのように操作しても、停止時にフロントが沈んだ状態から元にふわっと戻る動きが発生します。
ネットでV37 HEVのブレーキについて調べると同様の症状について「揺り戻し」という表現がされているのですが、まさにそんな感じです。気を付けて停止しても「ふわっと」戻るのです。
ブレーキのリプロがあるらしい
長々と書きましたが、要するにブレーキがギクシャクするということです。
ネットでスカイラインHEVのブレーキについて調べていると、どうやらブレーキのフィールを改善させるリプロ(グラミング?)というものがあるらしいです。
私が感じている症状のうちどれに効くのか、はっきりとは分かっていないですが、近いうちにディーラーでリプロを実施してもらう予定です。
ちなみに、山道を走って強めにブレーキを掛けるときは上述の癖は全く気にならず、リニアに効かせられますし、下りでも1800kgの車重を不安なく受け止める十分なストッピングパワーがあります。
私が購入したスカイラインは初期型ですが、リプロが出ているくらいなので、途中のモデルからはおそらくブレーキフィールは改善されているものと思われます。
回生ブレーキは通常は摩擦熱として捨てるエネルギーを電気として回収できるので、エコなシステムですが、摩擦ブレーキとの協調や制御は難しいようですね。
※追記:ブレーキのリプロを実施をしたところ、ブレーキフィールが大幅に改善されました。