とりあえず車を楽しむ

ヘッドライトは黄ばむが、テールランプは黄ばまない理由

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ある程度年数の経った車のヘッドライトは室外保管している場合、次第に黄ばみ・くすみが出てきます。

ヘッドライトは車の顔の目にあたるパーツでもあるので、ヘッドライトが黄ばんだりしていると車全体が古ぼけて見えてしまいます。それを嫌ってヘッドライトを磨いたり、コーティングしたりする人も多いのではないかと思います。

 

そんな古くなった車についてくるヘッドライトの黄ばみ問題ですが、テールランプが黄ばむという話はあまり聞きませんし、私の車もテールランプは小傷こそはついているものの、黄ばみは見られません。

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一度も磨いたことのないBLレガシィのテールランプ

磨いても磨いてもヘッドライトは黄ばむのに、なぜテールランプは黄ばまないのかその疑問について調べました。

 

レンズカバーの材質が異なる

現在生産される車はヘッドライトとテールランプのレンズはどちらも樹脂製となっていますが、それぞれ使っている樹脂が異なります。この材質の違いによって黄ばむ・黄ばまないの差が生まれます。

 

ヘッドライトカバーの主材料:ポリカーボネート(PC)

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引用元:スタンレー電気㈱公式サイト

ヘッドライトのレンズにはポリカーボネート樹脂が採用されています。材質記号はPCです。

ポリカーボネート(PC)には下記の特徴があります。
・耐衝撃性が非常に高い(割れにくい)
・透明度が高い
・自己消化性があり燃えにくい
紫外線によって劣化する
・傷がつきやすい

ポリカーボネートは紫外線を遮断しますが、長時間紫外線に曝されることにより劣化・黄変します。また、衝撃には強いですが、比較的柔らかい樹脂のため表面に細かい傷がつきやすいです。

傷や紫外線による変色を防ぐためにレンズの表面にはハードコートと呼ばれる塗装がされます。

 

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これはミニのヘッドライトです。

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裏側には「lens >PC<」という材質表示があります。(PC=ポリカーボネート)

 

テールランプカバーの主材料:アクリル樹脂(PMMA)

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引用元:スタンレー電気㈱公式サイト

テールランプのレンズにはアクリル樹脂が採用されています。材質記号はPMMAです。

アクリル(PMMA)には下記の特徴があります。
・ガラスを超える透明度
紫外線の影響をあまり受けない
・可燃性
・耐衝撃性に優れる(ポリカーボネートよりは劣る)

 

アクリルは透明性・強度が高いので、ショーケースや水族館の水槽にも使われます。
また、その優れた強靭さと屋外でも劣化しない耐候性、透き通った美しさからアクリルは"プラスチックの女王"と呼ばれます。

 

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これはbBのテールランプ。ハードオフにあったジャンク品です。

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裏側には「Lens >PMMA<」というの材質表示があります。(PMMA=アクリル)

 

ポリカーボネートとアクリルの比較

・透明度
アクリル(93%)>ガラス(92%)>ポリカーボネート(86%)
アクリルの透明度はガラスをも超えます。

・耐熱性
ポリカーボネート(120~130℃)>アクリル(70~90℃)
ポリカーボネートは透明樹脂の中では耐熱性に優れます。

・耐衝撃性
ポリカーボネートはアクリルの約30倍、ガラスの約200倍の強度をもつ

 

ポリカーボネートは黄ばむ、アクリルは黄ばまない

結論を言いますと、ヘッドライトレンズはポリカーボネート(PC)製なので黄ばみ、テールランプレンズはアクリル(PMMA)製なので黄ばまないということになります。

ポリカーボネートを採用しているヘッドライトのレンズは長期間の使用により純正ハードコートが劣化・剥がれてくると紫外線の影響を受けて黄ばみが発生します。

一方、アクリルを採用しているテールランプのレンズは紫外線の影響をあまり受けないので黄ばみづらいです。

 

なぜヘッドライトカバーにアクリル樹脂を採用しないのか?

テールランプがヘッドライトのように黄ばまない理由は分かりましたが、ここで一つの疑問が生まれました。

テールランプに黄ばみにくいアクリルを採用しているのなら、なぜヘッドライトにもアクリルを採用しないのかということです。ヘッドライトにもアクリルのレンズを採用すれば黄ばみで悩む必要がなくなります。

 

自動車メーカーにヘッドライトとテールランプのレンズの材質が異なる理由を問い合わせてみましたが、そういう設計に関することは答えられないとのことでした。

なので確かなことは分からないのですが、ネット上の情報やポリカーボネートとアクリルの特性から考察すると、耐衝撃性(割れにくさ)や耐熱性の問題かなと推測しています。
※下記に述べることはあくまでも推測となります。

※追記

ヘッドライトが割れたときの破片からの人体保護が理由である可能性が高そうです。アクリルは割れた時に破片が鋭利になるため保安基準を満たさないようです。

 

割れにくいヘッドライトにするため?

仮に歩行者が車に跳ねられることがあった場合、ヘッドライトに割れやすい素材を使っていたら、追突によってヘッドライトのレンズが割れ、その切り口によって人が怪我をしてしまいます。アクリルよりも割れにくく、しなやかなポリカーボネートを使うことでそのリスクを少しでも抑えることができると考えられます。

現在の車は歩行者保護を重視したバンパーやボンネットの形状で設計されているので、ヘッドライトにも歩行者保護のために割れにくい材質を選定している可能性はあります。

ポリカーボネートは透明樹脂の中では最も衝撃に強く、防弾ガラスや防弾シールドの材料として使われるほどの耐衝撃性があるようです。

ポリカーボネートが使われている身近な物としてはスマホのハードカバーやCDなどがあります。

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これはポリカーボネート製のハードタイプのスマホカバーです。触った感じはカチカチとした硬いプラスチックで、力を加え曲げるとバキッと割れそうな感じがあります。

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しかし、このように折り曲げても割れることなくしなやかに曲がります。手を離せば多少の折った後は残るものの元に戻ります。ポリカーボネートの割れにくさ・しなやかさが分かると思います。

 

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引用元:http://clearkobo.com/features-of-acrylic/
一方でアクリルはガラスよりは割れにくいものの破損した場合、切り口が鋭利で危険なようです。

 

 

ライトの熱によりレンズが溶けないようにするため?

上述しましたが、ポリカーボネートはアクリルよりも耐熱温度が高いです。
ポリカーボネート(120~130℃)>アクリル(70~90℃)

 

ヘッドライトのハロゲンやHIDのバルブ(バーナー)の表面温度は300℃近くになるようです。そのためバルブからレンズまではある程度離れているとはいえ、耐熱温度がポリカーボネートに劣るアクリルだと熱によってヘッドライトのレンズが溶けてしまうことが考えられます。
参考:「バルブの表面温度を計測してみました♪♪♪」REIZ TRADINGのブログ | REIZ TRADING - みんカラ

特に夜間のライト点灯時はヘッドライトはテールランプと違って長時間高温にさらされることになるので、材質を使い分けていても不思議ではないです。

 

昔ヘッドライトのレンズがガラスだったのもライトの高温に対応できるのがガラスしかなかったという理由だったようです。そこに高温に耐えられるポリカーボネートが紫外線と傷に弱いという問題をハードコート塗料の開発により克服できたため、ヘッドライトレンズとして採用された経緯があるようです。
参考:JAF | JAF Safety Light ヘッドライトの使い方 交通安全情報サイト

 

ヘッドライトレンズの黄ばみは仕方ない

ヘッドライトレンズに黄ばみにくい素材を使えばいいのにと思う人は多くいると思います。

ヘッドライトレンズにアクリルではなく、ポリカーボネートが採用されるのはヘッドライトレンズとしての様々な要求スペックに応えられるのが、いくつかある透明樹脂のうちポリカーボネートだけだったのではないでしょうか。

ポリカーボネートには紫外線を浴び続けると黄変するという性質がある以上、黄ばんでしまうのは仕方なさそうです。

 

純正のハードコートが劣化してヘッドライトが黄ばんできたらヘッドライトを磨いて黄ばみや傷をきれいにし、黄ばみが再発生しづらいように、レンズ表面をコーティングするのがいいと思います。

 

 

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