出典:モーターファン
V37スカイラインのDAS(ダイレクトアダプティブステアリング)装着車はステアリングホイールの操作とタイヤの動きが機械的に繋がっていません。
しかし、ステアリングホイールからはステアリングシャフトが伸びていますし、その先にはステアリングギアボックスもあります。緊急時用に一般的なステアリング機構も残されているのです。
ハイブリッド車の場合、電源をON(エンジン始動に相当)にすることでクラッチが切れて、物理的な結合が断たれるようになっているので、普段の走行時はバイワイヤ状態です。
ということは電源をOFFにした状態では、クラッチが繋がるので、ステアリング操作⇒シャフト⇒ギアボックス⇒タイヤというように機械的に結合した状態で操舵できるわけです。
もちろんアシストはしてくれないので、重ステ状態にはなります。
今回、V37で直結状態のステアリング(重ステ)を試してみたので、感想を書きたいと思います。
※一応断りを入れておきますが、公道で試したわけではないです。
重ステ状態で動かす
ステアリングのクラッチが繋がるのは電源をOFFにしたときですが、その状態ではもちろん自走ができません。なので、ほんの少し傾斜のある場所で重力を借りて試します。
Dレンジ、もしくはNレンジの状態で電源をOFFにします。電源をOFFにした瞬間にクラッチが繋がるので、ステアリングが機械的につながっている状態となります。
あとは傾斜に沿ってブレーキを調整しながら、歩行するくらいの速度で転がしていくのですが、ちゃんと舵がききます。(動かす前にブレーキを何回踏んでもちゃんと効くことは確認しています)
ステアリングを切っていくのですが、やはりアシストがないのでめちゃくちゃ重たいです。
歩行程度の速度だと、特にタイヤが真っすぐを向いた状態からステアリングを切っていくときがもの凄く重く、両手で「おりぁーー」というくらいに力を込めて回さないと車の向きが変わっていきません。
超低速であることやフロントの重量、タイヤ幅が245mmと太いということも要因かと思いますが、とにかく重く、車が大きな円を描くようにゆっくり向きを変えていくのがやっとです。通常時のようにくるっと一気に回すなんていうのは不可能です。
仮にこの状態で走るとしたら、狭い道の左折とかできる気がしないですし、ステアリングの革も擦れて傷みが早まりそうです。
ちなみに、ステアリングを直進に戻していくときはそこまで重くなかった気がします。
また、徐行状態から電源をOFFにしても同様で、瞬時にクラッチが繋がるので重ステ状態で舵がききます。
ロックトゥロックの回転数が変わる
エンジンや電源を切ると重ステになるのは、V37 DAS装着車に限らずどの車も一緒ですが、一つ面白い発見がありました。
それは、電源をOFFにしてクラッチが繋がった状態だとロックトゥロックの回転数が変わるということです。
こちらの写真は電源ON、すなわちバイワイヤ状態でステアリングを左に切ったときのロック位置です。V37は結構クイックなギア比になっているので、1回転とこれくらいしか回りません。ロックするまで1.1回転ほどでしょうか。
ところが、電源OFFでつながった状態になるとロックする位置が変わります。
こちらの写真は電源OFFでクラッチが繋がった状態で左に切ったときのロック位置ですが、なんと1.5回転ほど回ります。
タイヤの切れ角は変わっていない(はず)ので、実質のギア比が変わったかのようになっています。
普段のロック位置を越えてもステアリングが回り続けるので、最初???となります。
重たいステアリングを力を込めてゆっくり回していく状況なので、なおさら「どこまで回っていくの?」という感じになります。
実質のギア比が変わるのもDASならではなのでしょう。
モーターファンの「新型スカイラインのすべて」によると、この車の機械的なステアリングギアレシオは16.6のようなので、直結した状態でロックトゥロックが3回転ほどになるのは妥当かもしれません。
バイワイヤ時のロック状態は物理的にストッパーにぶつかるのではなく、モーターの抗力で発生させているので、ロックトゥロックは2.2回転ほどになっています。
もう一つ驚いたのが、重ステ状態でステアリングを左にロック位置の1.5回転程まで切った後に電源をONにすると、ステアリングが1.1回転の位置にまで自動で戻ります。
もちろんタイヤの向きは変わらずにステアリングホイールだけがひとりでに回るのです。
なんだかゲームセンターのレースゲーム機を連想します・・・
あらためて据え切りってタイヤに悪そうだと実感
ノンパワステの車を操作するのは初めてではないですし、前々から分かっていることではあるのですが、重ステを試してみることで、あらためて据え切りってタイヤ(だけじゃないと思いますが)に相当な負荷が掛かるんだろうなというのを実感できました。
転がしながらゆっくりステアリングを切るのでも重いのに、静止状態で摩擦力の強いゴムを相当な力で固い地面に押し付けながら擦るというイメージを浮かべると、まさに暴力的ですね。
タイヤが少しでも転がっている状態でステアリングを切ることをより意識するようになりました。
おわりに
V37 DAS装着車はステアリングが直結していないために不安なイメージを持ってしまうのですが、走行中に何らかの不具合で電源が落ちた場合でも、操舵は可能だということが分かりました。
ただ、ステアリングが重くなることはもちろん、普段より多めにステアリングを切らないと曲がっていかないので注意が必要です。
また、操舵よりもどちらかというと制動のほうが大事ですが、今回のハイブリッド車で試したケースでは、電源OFFの状態でもブレーキは何回踏んでも軽い踏力で効かせられました。仮にバッテリーが完全に空っぽの状態だったとしたら、ブレーキが効くのかは不明です・・・
一般的なガソリン車だとブレーキペダルのアシストが数回で効かなくなり大変危険なので、同じことを試すのはおすすめしません。
念のためですが、一般公道の下りでエンジン・電源OFF状態にして、惰性で下るというようなことは大変危険なのでしないでください。